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小児がん患者の副作用予防薬/NCI臨床試験結果

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2015年5月13日掲載

要約

制吐薬オンダンセトロン(ゾフラン)へのアプレピタント(イメンド)の追加が、小児の化学療法誘発性の悪心・嘔吐予防に有効であり、その有効性はデキサメタゾン投与の有無に関わらず示されることが第III相ランダム化臨床試験の最終結果により明らかとなりました。

本試験において、化学療法施行後5日間の悪心や関連症状がみられなかった患者の割合は、両薬剤を投与した患者では約半数でしたが、オンダンセトロンのみの患者では1/4にとどまりました。

出典
 2015年3月12日付、Lancet Oncology誌(ジャーナル抄録を参照)

背景

化学療法誘発性の悪心・嘔吐は成人、小児ともに頻発し、がん治療を制限する可能性がある副作用です。化学療法後の悪心・嘔吐予防の標準的ケアとしては現在、セロトニン受容体拮抗薬(オンダンセトロンなど)やステロイド薬デキサメタゾンの投与があります。しかしこの治療法は、小児では成人に比べて効果が低いのです。

ニューロキニン-1受容体拮抗薬であるアプレピタントは化学療法を受ける成人の悪心・嘔吐予防に有効ですが、小児での有効性と安全性についてはわかっていません。

試験

嘔吐のリスクが中等度以上の化学療法を受けている生後6ヵ月~17歳までの307例のがん患者を、アプレピタント+オンダンセトロン(アプレピタント群)あるいは、プラセボ+オンダンセトロン(対照群)にランダムに割付けました。デキサメタゾンの使用については、両群ともに担当医の裁量に任せました。

試験薬はすべて、化学療法施行日に経口投与しました。本試験の主要エンドポイントは化学療法開始後25~120時間(遠隔期)における完全奏効(嘔吐や吐気なし、あるいは制吐薬の緊急使用[嘔吐や悪心を治療する薬剤を投与しないとコントロールできない場合]なしと定義)。副次的エンドポイントは安全性でした。

本試験は韓国のソウルにあるソウル国立大学医学部のHyoung Jin Kang医師が主導し、アプレピタントのメーカーであるMerck & Co.社が出資しました。

結果

アプレピタント群の51%(77/152例)で遠隔期において完全奏効がみられましたが、対照群では26%(39/150例)にとどまりました。

化学療法が関連する有害事象はアプレピタント群79%、対照群77%で報告がありました。グレードに関わらず、有害事象で最も多かったのは発熱性好中球減少症、好中球減少症、貧血でした。

重度(グレード3以上)有害事象で最も多かったのは発熱性好中球減少症、貧血、好中球数減少でした。これらの副作用はすべて両群において同等の頻度でみられましたが、貧血はアプレピタント群よりも対照群でより多くみられました。

制限事項

患者が受けた化学療法のレジメンに関わらず試験結果には一貫性がみられましたが、「本試験はそれぞれの化学療法レジメンにおけるアプレピタントの有効性を評価するためにデザインされたものではない」と、著者らは記しています。

また、デキサメタゾンは選択的に使用されたため、悪心・嘔吐歴のある患者や結果不良となりそうな患者に偏って用いられている可能性もありえます。

結果として本試験結果では、小児に対する制吐薬としての糖質ステロイドの役割について評価することはできません、と著者らは注意を促しています。

コメント

「本試験はおそらく、これまでに行われた小児がん領域における制吐薬の試験では、最大かつ優れたデザインをもつ試験です」と、Richard Gralla医師は論説欄で述べています。

「アプレピタントは催吐作用の高い化学療法薬による悪心・嘔吐の予防薬として14歳以上の患者に対して2003年に承認されましたが、これまで小児がん専門医が小児への投与量の参考としてきたのは、後方視的な報告や口コミのみでした。本試験は、現在の小児の制吐療法レジメンへのアプレピタントの追加に対して強力なエビデンスを提供するとともに、青年と小児への投与量の基準となります」と、NCIの小児がん部門の臨床部長であるMelinda Merchant医学博士は述べています。

原文

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大倉綾子 訳
寺島慶太(小児血液・神経腫瘍/国立成育医療研究センター 小児がんセンター)監修
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